この話は私が体験したノンフィクションのアンビリバボー話である。


     3人の役者

 私の所属するチームリヴァーレのメンバーで長崎県の宮ノ浦に行きました。

今回の釣行メンバーは私、持田さん、中村君、川尻君、ハタ坊、主役の輝ちゃん。



今回珍事件を起こしてくれた主役の平井輝彦君(通称:輝ちゃん)その輝ちゃんを少し紹介しておこう。




輝ちゃんは少しおっちょこちょいで、ラインを交換しようとしてスプールが海の中にドボン!
150mラインを手繰り寄せなんとかスプールを回収、渡船で荷物の受け渡しの際にグローブに荷物が引っ掛かり海にドボン!船長がなんとか輝ちゃんを回収、三階のビルから落ちて全身打撲1年入院などなど話せば長くなるのでこれ位で・・・



  尾上の西で対戦

この日はチームリヴァーレのクロ釣り王者決定戦予選で、輝ちゃんVSモッチーの対戦だった。私は対戦が無いので少し離れた場所で釣っていた。

対戦相手のDrモッチー事、持田さん        対象魚はメジナ

そして試合終了10分前に事件は起きた!!輝ちゃんはキーパーサイズギリギリを数枚揃え、終了間際に「きったー!」と大きく竿を曲げデカイデカイ!と勝利を確信して喜んでいたが、上がってきたのは対象魚では無い真鯛だった・・・



「なんだ!真鯛か・・・」とタモに納め針を外そうとした瞬間!「んっ!なんだ?鼻に虫が入ったか?」と鼻を触ると「えっ!うそ!うそ!うそ!なになになに???」と自分でも何が起きたか解らない・・・

 

驚くことに!ハリスが鼻の穴から出ておりウキがぶら下がっていた!(真鯛もビックリしていただろう)「うそやろー!シャレにならん!」

そうです!真鯛の口から外れたハリは輝ちゃんの鼻の穴に入ってしまったのです!輝ちゃんは私たちに見つからない様に外さないとバカにされると慌てて道具箱から鏡を取り出しペンチでハリを取ろうとしたが中々抜けない「はーっ・・・」と自分で取るには限界があり鼻は血だらけになっていた・・・

そこで異変に気づいたモッチーが駆け寄り「どうしたー!鼻血だして?真鯛釣って興奮した?」と事情を聞き。「俺が取ってやろう」とペンチを握りしめると輝ちゃんは「お願いがあります。中野隆二だけには内緒でお願いします」と輝ちゃんは私に見つかることを恐れていたと言う・・・

そして、Drモッチーのオペが始まった。(初めての磯でのオペに緊張したと言うが、モッチーは医者じゃない)幸いにハリはスレバリだったのでどうにかなると思いDrモッチーは鼻の穴にペンチを突っ込み抜こうとするが鼻の穴なので見えづらくなかなか抜けない・・・

そして、私が二人の姿が見えないのに気づき探すと岩陰に2人を見つけた。「んっ!?」と思い駆けよると、輝ちゃんの鼻の廻りが血だらけでペンチを鼻に入れているモッチーが居た。「どうした?」と見た事も無い光景に驚き聞くと「鼻の穴にハリが入った・・・」と話したく無さそうに答えた。
「えー!まじで!」と鼻の穴を見るとハリスが15cmほどピョンと出ていた!

私は我慢出来ずに「ごめん!」と猛ダッシュでその場を離れて大笑いしてしまった!

って釣りをしていて考えられますか?鼻の穴にハリが入るなんて!痛そうで!可哀そうで!どんな確率で?と思うと笑いと涙が止まらなかった。(ごめんね!輝ちゃん・・・)



そして私も落ち着き取り戻しオペ現場に戻ると、Drモッチーは真剣な顔でオペしていたが、私は笑いを堪える事に精一杯で手が震え助手を務める事は出来なかった。こんな時に悪いとは思ったが、こんなチャンスは無いと思い勇気を出して「輝ちゃん?写真撮っていい?」と聞くと。

痛そうな声で「い・い・よ」と答えてくれた。なんて良い人だと思い、

私は笑いをこらえ手ブレだけは起こさない様に注意して貴重な写真を撮ることに成功した!





次第にハリの廻りの肉が腫れ上がりハリは見えなくなっていった・・・

Drモッチーは「全力は尽くしましたが、私では無理です」とオペを断念した。
なんども言うがモッチーは医者じゃない・・・




この事件を船長に電話で伝えると、船長は慌てて駆けつけてくれて早めの納竿となった。
(輝ちゃんに聞くとさほど痛みは無かったと言う)


痩せて無いが、やせ我慢で笑顔の輝ちゃん!


港に着くと鼻からハリスが出たまま真剣な顔で輝ちゃんは数件の病院に電話を入れ事情を説明すると「いやーうちはやった事は無いですねー」「ぷっ!ちょっと待って下さい・・・痛いでしょ?」「それは不幸中の幸いですね!」とどの病院も見ないと解らないとの回答だった。
私はどこも見てくれないなら「動物病院は?」と進めたが「いや!」と輝ちゃんに断られた!

すると、1件の病院が「痛そうやね?サビキ?チヌバリ?」と釣り人が居る病院があったのでそこで見てもらうことにした。丸銀のシゲちゃん船長も「いやー何十年渡船業やっとるけど鼻にハリが入った人は初めてしぇん」と笑いを堪えながら心配していた。ハリスを10cmほどカットして、5cm位鼻からハリスが出たままで、3人で宮ノ浦を出る事にした。「いやー凄いねー!病院の先生驚くよー!楽しみやねー!」と3人で盛り上がり車で20分位進んで行くと、突然!「無い!無い!」と輝ちゃんが慌てだした!


何が?」と聞くと「ハリスが無い!無い!」と言い出した。

左:Drモッチー役  右:中野役

マジック!?いや違う!先程まで5cm位鼻から出ていたハリスが無くなっていた!3人は驚き!輝ちゃんは「入っていったかも?」と言い出したが、そんな事は無いと私は「どっかに落ちとろうもん!探してん!」と輝ちゃんはハリスを探すが落ちていない・・・慌ててルームミラーで確認したが、鼻の穴にハリスは見当たらなかった・・・




すると輝ちゃんが「ハリが鼻の奥で動いている!」と言い出し顔が青ざめていった!「そんな事はなかろうもん!」と言うと「ワーツ!奥に進みよう!奥に進みよう!」と言い出した!「口から吐いてん!」と言うと「ごぁーっ!ぺっ!かーっ!ぺっ!ぺっ!」と吐くが出てこない・・・喉に引っかかれば切開しないといけない大手術なると思い青ざめた顔でハリを口から出そうと必死な輝ちゃんを見ていると、私は心の中で「こんな事はあり得ない!絶対あり得ない!人間じゃない!」と思えば思うほどまた可笑しくなり、笑いを堪えるのに必死だった。すると、「あーっ!あーっ!また動き出した!あーっ!落ちて来るー!」と慌てだし「がーっ!うぇっ!」と口から出てきたのは血の固まりと鼻に引っかかっていたハリス付きのグレバリだった!?「やったー!取れたー!!出て来たばい!やったー!やったー!よかったー!」と3人で大騒ぎした。



実際鼻に入っていたハリ(グレハリの5号)


無事に口から出てきて笑い話で終わって良かったが、しかし鼻にハリが入ることも考えられないのに、それが口から出てくる何ともアンビリバボーな輝ちゃんに、私は何年分も笑わせてもらい感謝の1日だった。
あまりに凄い話なので輝ちゃんに確認する前にテレビ(日テレのザ!世界仰天ニュース)に投稿しみたら
「凄い話ですねー!是非詳しく聞かせて下さい!」と状況を担当者に事細かく説明すると大笑いしていた。輝ちゃん話すと「勘弁してよー!一生の恥じ!」と言っていたが、私が説得して出演交渉が成立したので、採用してもらえば年末の特番でテレビ放送されるかも知れない!乞うご期待!

最後に輝ちゃんは「今度から釣りの時はスレバリやね!」と言っていたが、

                    私はこんな事件はもう私は無いと思う・・・
中野

2008.12 釣春秋 投稿文より